皮膚疾患

 皮膚のトラブルが発生場合には、細菌やマラセチアのほか、寄生虫などの必ず感染症を除外する必要があります。その上で、再発が繰り返すようであれば、アレルギー疾患、乾燥、脂漏、内分泌疾患などを除外していきます。病態が重症な場合や、治りが悪い場合は、病理検査が必要になることもあります。

膿皮症(細菌性皮膚炎)

皮膚表面にみとめられる細菌性皮膚炎です。細菌が過剰に繁殖する事により発生する皮膚炎です。強い赤みやフケが見られたり、炎症により脱毛がみとめられたりします。再発を繰り返す時は、背景に基礎疾患の存在を疑います。アレルギーや内分泌疾患などは、必要応じ除外する必要があります。

当院で行う検査

「皮膚検査」皮膚表面の細菌など採取し顕微鏡で検査を行います。たくさんの細菌が確認できるのが特徴です。

細菌を確認する

治療

抗生物質を投与して治療します。再発が無ければ治療終了ですが、繰り返す様な時には背景にアレルギーなどの基礎疾患を確認する必要があります。その他、殺菌作用のあるシャンプーで、予防を行うことも大切です。

マラセチア性皮膚炎

マラセチアといわれる酵母菌が悪さをする皮膚炎です。べたべたと脂っぽい環境は、マラセチアの繁殖に適しています。脂漏体質の動物では、マラセチアの過剰な繁殖がおきやすいため注意が必要です。

当院で行う検査

「皮膚検査」皮膚表面の細菌など採取し顕微鏡で検査を行います。たくさんの酵母菌がみとめられるのが特徴です。

マラセチア

治療

抗真菌薬を用いるて治療します。同時に、脱脂作用の有るシャンプーや、抗真菌作用のあるシャンプーを併用します。再発が無ければ治療は終了ですが、体質が原因となっていることもありシャンプー療法での予防は大切になってきます。

糸状菌症(真菌)

皮膚糸状菌の感染によっ発生する皮膚炎です。猫での発生が多いですが、犬でも同様にみとめられます。痒みが少ない事もあります。ヒトにもうつるので注意が必要です。

当院で行う検査

「皮膚検査」皮膚表面の細菌など採取し顕微鏡で検査を行います。カビの菌糸が被毛を破壊する構造がみとめられる事が特徴です。

「真菌培養検査」病変部分から毛やフケを採取し、培養検査を行います。

尾の先端に発生
耳介部分に発生
培養検査
培養された糸状菌

治療

抗真菌薬の投与が必要になります。菌糸が皮膚の中で根をはるように広がっているため少なくとも4週間程度はお薬を続ける必要があります。完全に症状が消えた状態で、もう一度真菌培養検査を行うことが理想です。抗真菌成分の含まれる、殺菌シャンプーも有効であると思われます。

アレルギー性皮膚炎

強い痒みを伴う皮膚症状です。寄生虫感染や細菌感染などを治療しても、症状を繰り返す場合には疑いが強くなります。アレルギーの原因に関しては、環境が原因になっているものと、食事が主な原因になっているものがあります。原因が特定でき症状が消失する事もありますが、多くの場合「食事」「お薬」「シャンプー」「保湿剤」などを組み合わせ、症状を緩和する事が治療のゴールとなります。

当院で行う検査

「皮膚検査」皮膚表面の細菌など採取し顕微鏡で検査を行います。細菌や真菌、寄生虫感染が無いかを確認します。

「アレルギー検査 IgE測定」血液中のIgEを測定します。IgEの値が高い場合は、アレルギー物質が体に強い反応を示していると考えられるます。

「除去食試験」タンパク質を加水分解してある治療食を4~8週間続けます。痒みなどの症状が軽減する場合は、食事によるアレルギーを疑います。

治療

痒みが非常に強い場合は、お薬での痒みや炎症の抑えます。細菌感染なども併発している事も多く、感染の治療も同時進行でおこないます。アレルギーの原因が特定できた場合は、原因の除去を行います。具体的には、食事の変更とアレルギー物質との接触回避です。実際にはなかなか困難である場合が多いです。その他、薬用シャンプーを用いての、シャンプー療法。皮膚のバリア機能を高める、保湿療法なども併用します。根治できない場合は付き合っていく疾患であり、どのあたりまで症状を抑えていくか相談をしながら治療を進めていきます。

ノミ刺咬性皮膚炎

咬まれる事により反応する皮膚炎です。猫で多く、腰の周辺に小さいカサブタがたくさん発生します。咬まれが場所ではなく、腰の周辺にたくさん症状が発生するのが特徴です。

当院で行う検査

「皮膚検査」皮膚表面の細菌など採取し顕微鏡で検査を行います。

「ノミの検出」体表にいるノミを検出します。少量寄生の場合は、発見できないこともあります。その他、ノミの糞を発見する事が手がかりになる事もあります。

治療

反応性の皮膚炎であるため、二次感染を抑える目的の抗生物質と反応を抑えるプレドニゾロンを使用する事があります。ノミの駆除も必要です。

脱毛症

脱毛が発生する原因は様々あり一概にはいえません。脱毛する事が病気の本体であるものと、別の病気により二次的に脱毛するものとがあります。

背中の脱毛
尾の脱毛

当院で行う検査

「皮膚検査」毛根の状態から発毛周期に異常がないか確認します。皮膚表面の感染なども確認します。

毛根の様子

「血液検査」副腎皮質ホルモンと甲状腺のホルモンを測定し、内分泌疾患を除外します。

治療

パターン脱毛、淡色被毛脱毛症、アロペシアXなどは、脱毛以外の健康被害が認められないため、治療を行うかは相談になります。メラトニンや、発毛刺激するサプリメント、など治療を試みる事がありますが発毛の反応はまちまちです。内分泌疾患が認めらた場合は、そちらの治療が必要です。

ニキビダニ症(毛包虫)

ニキビダニの感染によって発生する病気です。1才以下の若齢時期と、免疫力が低下した時期に症状が認められる事が多いです。感染していても症状がない事がない場合がほとんどです。

当院で行う検査

「皮膚検査」ニキビダニを検出します。数回検査を行わないと検出されない事もあります。

検出されたニキビダニ

治療

駆虫薬による治療を行います。注射、内服などいくつかの選択肢があります。

マダニ

イボができた。という症状で来院される事もある。眼の周囲、耳、脇の下など柔らかい部分に寄生している事が多です。散歩中に草むらなどで感染します。多くの病気を媒介する事があり注意が必要です。発見した時には、無理矢理むしり取ると事はやめた方が良いでしょう。マダニの顎が皮下に残ってしまったり、マダニの中の病原菌などを体に注入する事になってしまいます。

当院で行う検査

「皮膚検査」マダニを実際に検出する事が必要です。

吸血しているマダニ

治療

ピンセットでのマダニ除去、又は駆虫薬での治療薬を用ます。春〜秋にかけて、定期的な予防は必要です。背中につけるタイプ、錠剤タイプ、おやつタイプなど様々なお薬があります。好みのものを選択して頂くと良いでしょう。

ノミ

屋内に持ち込まれると、屋内で繁殖するため注意が必要です。定期的にノミ予防を行うことが大切です。

当院で行う検査

「皮膚検査」体表にいるノミを検出します。少量寄生の場合は、発見できないこともあります。その他、ノミの糞を発見する事が手がかりになる事もあります。

ノミ

治療

ノミの駆虫と予防が必要です。背中につけるタイプ、錠剤タイプ、おやつタイプなど様々な剤形があります。

シラミ

イヌハジラミやネコハジラミなどの寄生がみとめられる。かゆみを伴う皮膚炎症状を認める。体力の弱った地域猫が来院された時に、偶発的に発見されるケースがあります。

当院で行う検査

「皮膚検査」被毛に付着するシラミの卵を検出します。

毛に付着する白いゴミ?
顕微鏡にてシラミを確認

治療

外部寄生虫予防薬の塗布を行います。感染している毛を刈る事も有効です。