ニコ動物病院では、FIP治療を実施しています。
猫伝染性腹膜炎 (FIP)は、未治療の死亡率が約96%と非常に致命的です。過去には診断後の平均生存期間が9日間という報告があります。つらい病気ですが、近年では治療が可能になりました。
治療により症状が改善していく様子は、私たちスタッフにとっても幸せな瞬間です。
▶︎ISFMより治療プロトコル出されました。レムデシビルと GS-441524 を使用します。
ニコ動物病院でも、そのプロトコルを参考にしFIP治療を行います。
※プロトコルでは英国の動物用薬を使用。流通の都合上、入手可能な同等品を用いる。
▶︎もう一つの選択肢としては、モルヌピラビルを選択します。
※プロトコルでは再発後や治療耐性が生じている時とされている。
※国内流通もあり、動物保険が利用可能であるため、こちらを使用する事もあります。
●診断と治療の流れ
診察 1、FIPを疑う臨床症状を検出する。(腹水胸水、神経症状、高GLB、高SAA、など)
2、院内でコロナウイルス抗体を検査(当日中に判明)
3、外注のFIPウイルス抗原のPCR検査(数日後に判定)
総合的な判断の上、FIPが疑われる場合は治療を開始を検討します。
メリット ・治癒する可能性があり、猫が救われる。
デメリット ・治療期間が長い(最短84日)
・毎日、注射又は、投薬が必要
●基本となる治療プラン
1、体調を整える支持療法。症状の重症度により、入院が必要なこともあります。
入院管理 静脈点滴、給餌、胸水や腹水の除去やドレナージ、呼吸管理などの集中治療。
2、GS-441524 又は レムデシビル を注射で投与します。 (7~14日目)
体調が悪い場合は、入院治療や点滴、食欲刺激、強制給餌などが必要です。
3、貯留液の消失、炎症の改善、などFIP症状が消失したことを確認。
※症状が残っている場合は、注射の継続や注射での投与量の増量を検討。
4、GS-441524を内服での投与に変更します。(8~15日目)
5、少なくとも84日目まで継続します。
●治療中の症状改善予想 ※下記の通りに症状が解消しない場合は、投与量の増量を検討します。
2−5日 | 食欲改善、発熱解消、貯留液減少 |
1−3週間 | アルブミン増加、グロブリン減少 |
2週間 | 貯留液消失 |
数週間 | リンパ節縮小 |
10週間程度 | 貧血とリンパ球減少の改善 |
●治療の効果と今後の課題
・以前は発症後生存期間の中央値が9日程度と言われていました。
・現在は77-90%程度の治療成績が報告があります。
・治療効果が認められる報告蓄積されつつあり、治療する価値は非常に高まっています。
・再発や、薬剤耐性、長期的な予後や副作用など、解明されていない問題は残されています。