消化器疾患

嘔吐はさまざまな原因で発生します。1~2回程度の嘔吐で比較的元気がある場合は、軽度の胃腸炎として治療から開始する事もあります。症状が重篤な場合や、治療により改善がない時は原因を追求する必要があります。

  身体検査 体調を確認するためには必要です。脱水の程度、腹部に痛みがあるかなど評価をします。

  血液検査  脱水の評価、膵炎や他の臓器の異常がないかの確認

  超音波検査 腹部の臓器の状態を評価、消化管の肥厚や構造の異常

多くの場合は、治療後に症状改善が認められます。基礎疾患があったり、症状が重篤な場合は治療に反応が乏しい事があります。そういった場合には、原因追及のため追加検査が必要になります。

・初発や症状が軽度な場合

通院での治療 は診察時に治療してご自宅でご様子を見ていただきます。脱水を改善するために皮下補液、症状に対しての投薬治療と内服を処方します。

・症状が重症化した場合は、通院で維持することが難しいことがあります。

入院での治療 脱水や体液バランスを整えるための静脈点滴、症状に対しての静脈注射などの治療を行います。症状の改善に合わせて栄養供給として給餌を行います。

    

下痢は、さまざまな原因で発生します。食欲があり元気な様子である場合は、腸炎の治療から開始する事もあります。症状が重篤な場合や、治療により改善ない場合は原因を追求する必要があります。

  血液検査  脱水の評価、膵炎や他の臓器の異常がないかの確認

  超音波検査 腹部の臓器の状態を評価、消化管の肥厚や構造の異常

  糞便検査  糞便の状態を観察。細菌叢の乱れや、寄生虫感染の確認をします。

  PCR検査  検出が難しい寄生虫やウイルスなどの感染症を診断します。

 多くの場合は、治療後に症状改善が認められます。基礎疾患があったり、症状が重篤な場合は治療に反応が乏しい事があります。そういった場合には、原因追及のため追加検査が必要になります。

通院での治療 脱水を改善するために皮下補液、症状に対しての投薬治療、内服の処方

症状が重症化した場合は、通院で維持することが難しいことがあります。

入院での治療 脱水や体液バランスを整えるための静脈点滴、症状に対しての投薬治療

下痢や嘔吐の症状が、なかなか改善しない状態を表します。通常は3週間以上症状が続いている状態の事を言います。治療により改善が乏しい場合は、一つずつ除外をしながら診断をします。

1、症状を緩和するような対症治療を行う。(点滴や注射、内服薬など)

2、血液検査や超音波検査にて異常所見の除外を行う。

3、PCR検査や試験的駆虫などを行い感染症を除外する。

4、プレバイオティクス、プロバイオティクスの投与を行い反応を観察する。

5、食事の変更での症状改善の評価する。(食事反応性の除外)

  ・低脂肪食・高繊維食・低アレルギー食を順番に与え治療の反応を観察する。

   変更後は2週間は続けて、改善なければ別の食事を試す。

 〜ここまでで反応がない場合は〜

 6、内視鏡検査を実施します。  組織検査を実施し病態の評価を行います。     

 炎症の場合

 7、免疫抑制剤治療 治療に反応を示す場合は、免疫抑制剤反応性腸症と判断します。はじめは、、プレドニゾロンやブデソニドなどを使用し、炎症反応を抑え症状をコントロールします。長期的な維持にについては、シクロスポリンなどの免疫抑制剤を併用も検討します。

 8、難治性の慢性腸症 改善がなかなか認められない場合に関しては、難治性の症状と判断します。幹細胞治療を提案する場合もあります。

 腫瘍として診断された場合

 9、腫瘍毎に個別で対応が必要になる。(リンパ腫、肥満細胞腫、腺癌、GISTなど)

 

誤食は常に注意が必要です。色々なものに興味がある若い子ほと注意が必要です。食べてしまったものによって対応が変わってきますので、何を食べたかをはっきりさせるひつようがあります。場合によっては生死に関わる問題に発展します。疑わしい時は、できるだけ早く対応を始める必要があります。

食べたもの形状によっては、吐き出させることが可能かもしれません。胃の中にある場合は、内視鏡で摘出することもできます。まずはしっかりお話しを伺います。

超音波検査 消化管に異物が流れ込んだ場合には閉塞所見などが現れます。

レントゲン検査 石、金属、ゴムポールなどレントゲンではっきりするものもあります。木材、布、プラスチックなどはなかなか描出されにくいです。

造影検査  ヨード系の造影剤を使用し、消化管内の状態を把握します。時間の経過に合わせて何度も撮影する事で、異物の存在や通過障害が見つかります。

CT検査  CTを用いて体の中を立体的に観察する事で、異物の検出につながる場合があります。無麻酔や軽い鎮静で撮影する事ができる場合もあります。

誤食した異物を体外に排出する事が目的となります。放置しておくと、閉塞や穿孔を発生し、腹膜炎を発生する場合があります。そのため早い段階での対応が望まれます。治療の方法は、飲み込んだ異物の大きさや形によって変わります。

経過観察 飲み込んだモノがとても小さくい場合。排泄される可能性もあり、経過観察とする場合もあります。

催吐処置 安全性の高い薬剤を使用、吐き出させます。うまく吐き出す事ができると治療としては終了します。嘔吐を誘発できる場合と、嘔吐しても内容物が吐けない場合もあります。

内視鏡での処置 鋭利なものは、吐き出させると食道などに傷をつける可能性があります。そのため、内視鏡検査を第1選択とします。大きさによっては、開腹手術の方が安全と判断することもあります。

開腹手術  腸管まで異物が流れている場合、内視鏡での摘出が困難なモノの場合は選択します。

 中毒を発生するものを食べてしまった場合は、どのくらいの量をいつ食べかががとても大切です。少量でも注意が必要ですが、大量に食べてしまった場合は取り返しがつかないことになる場合もあります。来院時には、身体検査や血液検査を実施します。中毒症状が発生しているかどうか。今後発生する可能性があるかを順番に確認します。

身体検査 触診、聴診など体調変化がないか確認します。

血液検査 中毒症状が発生しているかの状態を把握します。

超音波検査 胃内に内容物が残っているようであれば、吐き出させることも有効です。

催吐処置  食べた直後であれば、嘔吐させることで吸収される量が減らせます。

胃内洗浄  明らかな中毒量、命に危険がありそうな量を食べた場合は麻酔下での胃洗浄を実施します。可能な限り、吸収される量を減らします。

静脈点滴 点滴により、強制利尿をかけ排泄を促します。

活性炭の投与 活性炭に吸着させ糞便と共に排泄させます。吸収する量を減らします。

              

飲み込んだものが、食道にとどまることによって、急に苦しそうになり、涎がダラダラ出たりします。おもちゃや異物のこともあれば、大きめのリンゴの塊なども食道に停滞する場合があります。

レントゲン検査  食道内の異物が描出される可能性があります。

造影検査     造影剤を飲ませることで、閉塞がはっきりすることもあります。

内視鏡検査    異物を直接観察できます。

直接的な治療ではないのですが、造影検査などを行っていると胃中に移動してくれる場合があります。

内視鏡     詰まってるモノや状況により変わりますが、内視鏡で摘出する場合と、胃の中に押し込む場合があります。消化できないようなものは、胃の中に押し込んだ後、胃切開をして摘出します。

・肉芽腫性ポリープ

病原体を経口接種することで感染。ペットショップや保護施設からやってきた子に時折みられる。症状がないまま感染していることもあるりますが、下痢、軟便、粘液便などの症状を示すことも多いです。

糞便検査 院内で実行する通常の検査です。直接顕微鏡で確認できますが、検出率が高くないことが欠点です。

PCR検査 外注の検査です。便中に含まれる遺伝子情報を検出します。

内服投与による治療を行います。メトロニダゾール、チニダゾールなどの投与を行います。駆虫に苦戦し、何回か投薬を繰り返すこともあります。

病原体を経口接種することで感染。猫で特に問題となる感染症です。症状がないまま感染していることもあるりますが、下痢、軟便、粘液便などの症状を示すことも多いです。

糞便検査 院内の糞便検査にて検出します。通常の糞便検査の検出率は高くないため、陰性であっても完全な否定はできません。

PCR検査 外注の検査です。便中に含まれる遺伝子情報を検出します。

猫のトリコモナス症では、ロニダゾールの投与が推奨されます。

駆虫に苦戦し、何回か投薬を繰り返すこともあります。

          

下痢などの消化器症状や著しいアルブミン低下を示す病気です。免疫の異常や炎症、腫瘍に併発して発生することがあります。拡張したリンパ管からタンパク成分が漏れ出てしまい、低アルブミン血症を呈します。アルブミンの低下は胸水や腹水の貯留、栄養状態の低下による代謝異常などを引き起こします。改善しない場合は命の危機が考えられます。

身体検査 体重や一般状態の把握をします。

糞便検査 まずは院内でスクリーニング検査をします。

PCR検査  感染性の消化器疾患がないか除外します。

血液検査 低タンパク、低アルブミンの発生がないか。他にアルブミンが低下する原因となる疾患がないかを検査します。

腹部超音波検査 腹腔臓器のスクリーニングをします。特に消化管の構造を中心に確認します。消化管の粘膜層に白色のラインが認められることもあります。

内視鏡検査 内視鏡検査を実施し肉眼的な異常所見がないか確認します。特殊な鉗子を用いて消化管から組織採材も行います。

病理検査  内視鏡などで回収した組織片を用い、病理検査を行います。外部の専門機関にて組織的な診断を下します。

食事治療 低脂肪食が治療効果を示す。各社脂質を制限した治療食があり、そちらから開始しする。それでも反応が悪い場合は、鶏ささみ、白身魚、白米、じゃがいもなどで低脂肪手作り食を試みる。

投薬治療 プレドニゾロンやブデソニドなどを使用し、症状の緩和や改善を促すことがある。

慢性的な下痢や嘔吐を繰り返し、一般的な治療をしても改善しないまたは再発を繰り返す場合に疑います。慢性腸症と症状も類似しているため注意が必要です。

身体検査 体重や一般状態の把握をします。炎症反応や膵炎の除外も必要です。

糞便検査 まずは院内でスクリーニング検査をします。

PCR検査  感染性の消化器疾患が無いか除外します。

血液検査 全身状態を評価する目的で行います。Ca や SDMAの上昇とリンパ腫の関連が報告されており、それらの項目は特に注意します。

腹部超音波検査 腹腔臓器のスクリーニングをします。消化管の構造異常や肥厚がないか確認します。リンパ節に腫脹があった場合は、可能であれば針生検を行います。

細胞診 リンパ節を穿刺することができた場合に実施します。時に診断につながる場合があります。

クローナリティ検査 細胞を回収できた場合追加で検査をします。T細胞性、B細胞性のリンパ球かが判断できます。リンパ球が腫瘍性かどうかの判断も可能であり、リンパ腫の補助診断として有効です。

内視鏡検査 内視鏡検査を実施し肉眼的な異常所見がないか確認します。同時に、胃や腸から特殊な鉗子を用いて組織片を採取します。

病理検査  内視鏡などで回収した組織片を用い、組織検査を行います。外部の専門機関にて組織的な診断を下します。

化学療法 化学療法での治療が最も一般的です。リンパ腫といっても分類は多岐に渡り、腫瘤に合わせた治療法を選択します。

外科療法 消化管が、閉塞や穿孔している場合には、病変部位を取り除く必要があります。その後に、化学療法の併用も行います。

中高齢の犬に発生する病気です。ダックフンドによく認められます。犬種に偏りがあるため、遺伝素因も考えられます。血液が付着した便を排出、便が細くなったなどの症状が出ます。直腸検査時に、明らかな腫瘤が確認できます。

身体検査と直腸検査 鮮血の付着や、腫瘤を確認することができます。

内視鏡検査 内視鏡を用いて直腸内の状態を観察します。可能であればそのまま検査用の組織摘出を行います。

病理組織検査  内視鏡などで回収した組織片を用い、組織検査を行います。外部の専門機関にて組織的な診断を下します。

免疫抑制治療   小さい腫瘤の場合はまず実施し、腫瘤の縮小が得られるか確認をします。治療に反応しない場合もあります。

外科療法   大きい腫瘤の場合 腫瘤サイズが大きい場合は、手術にて摘出を実施します。結腸粘膜を引き出す特殊な手術を行います。

・膵炎 嘔吐や食欲不振などの消化器症状を発生する病気です。