不妊(避妊)手術 と 去勢手術

私たちは、予防的な手術として不妊・去勢手術をお勧めしております。望まない出産を防ぐことも大切なのですが、発生頻度の高く命に関わる病気も期待できるからです。その他にもマーキングや攻撃性など、問題行動を減らす事も期待できます。デメリットとして考えられる事もいくつかあるため、十分に相談して決定しましょう。

【当院の特徴】

①血管シーリングを行い、腹腔内に極力糸を残さないようにしています

当院では、動物の負担を最小限に抑えながら手術を実施するの手術機器を備えています。近年、「縫合糸反応性肉芽腫」という糸が体内に残ることによって引き起こされる問題が注目されています。この肉芽腫を防ぐためには、血管の縫合に糸を使用せずに電気メスを用いて血管をシーリングする必要があります。当院では、この安全な血管シーリング技術を採用しています。血管シーリングにより手術時間が短縮され、動物の負担が軽減されると同時に、肉芽腫のリスクも排除されます。

②手術は必ず2名以上で実施いたします

どんな症例でも執刀医とは別に麻酔スタッフを配置しております。最低でも2人以上で行い、安全性の高い手術を実施しております。執刀医が1人で手術をしながら麻酔管理を行うということはございません。

③局所麻酔などを用いて極力痛みが少ないように実施しております

鎮痛剤や局所麻酔を使用することで、避妊や去勢手術時の痛みを最小限に抑えます。また、手術後のケアにも重点を置き徹底した疼痛管理を行っています。

④避妊手術の場合、卵巣摘出と卵巣子宮摘出を選択することが出来ます

犬や猫の避妊手術には、卵巣摘出(卵巣単独摘出)と卵巣子宮摘出(卵巣と子宮の両方を摘出)の2つの方法がありどちらか選択することが可能です。

【手術までの流れ】

【手術後の食事ついて】

退院後1週間は今までの食事で問題ございません。

理由は、食事を切り替えてしまうと食欲がない場合に、体調が悪いのか、ご飯の切り替えが原因なのか分からないためです。

1週間後からは成犬用のご飯やおすすめの避妊去勢後用のご飯をご紹介することもございます。

【避妊去勢手術と一緒に実施できること】

不妊手術は全身麻酔を行うため乳歯の抜歯、マイクロチップ挿入、耳洗浄や涙管洗浄を一緒に行うことができます。詳しくは獣医師とご相談ください。

事前に飼い主様にご相談したうえで実施いたしますので、勝手に実施することはございません。

【避妊去勢手術後の抱っこの仕方】

避妊手術:胸を押さえないように、両方の前足を腕にかけるようにしてください。後ろ側から骨盤をすくい上げるように抱っこしてください。このような抱き方であれば、お腹の傷に触れず、痛がることは少ないです。

去勢手術:後ろ足を抱えるように抱っこしてください。

抱っこの参考例
抱っこの参考例2

【避妊去勢手術に関するよくあるご質問】

Q 不妊手術や去勢手術は、必要なのでしょうか?
伴侶動物としてともに生活をする場合、いくつかのメリットが報告されています。
そのため、手術を受けることを勧めています。
もちろん、子供を産ませたいなどのご希望がある時は、お勧めいたしません。

Q どのようなメリットがあるのでしょうか?
女の子の場合は、乳腺腫瘍(乳ガン)の予防効果がはじめにあげられます。
乳腺腫瘍は犬における最も頻繁に認められる腫瘍のひとつなのです。
未避妊のワンちゃんにおいては、10歳で10%以上確率で発生するという報告もあります。
乳腺腫瘍の発生と発情の関係は明確になっています。
避妊手術を行うことによって乳腺腫瘍発生率を著しく下げることが出来るのです。
初回発情前に行うと0.05%、初回発情後では、8%、2回目の発情後では、26%まで発生する確率を下げる事ができます。
それ以降では悪性腫瘍の予防効果ないのですが、良性腫瘍の発生率は下げることは期待できます。
予防効果を高めるためには、発情がくる前の不妊手術が理想です。
その他には、卵巣腫瘍、子宮蓄膿症などの予防にもつながります。
男の子の場合は、精巣腫瘍や前立腺疾患の予防や、会陰ヘルニアの発生リスクを下げる効果が期待できます。
特に停留睾丸は、腫瘍発生率が増加するため注意が必要です。

Q 猫では、どうなのでしょうか?
ネコちゃんでも、同様に避妊手術によって乳腺腫瘍を防ぐことが出来ます。
猫において乳腺腫瘍は、造血系腫瘍、皮膚腫瘍についで3番目に多い腫瘍です。
避妊手術による腫瘍の発生率減少に関しては十分に期待できます。
6ヶ月以下で手術した場合91%、1歳以下で手術した場合86%の減少効果が期待できます。

Q マーキングなどの問題は改善しますか?
手術を行うことによって、期待できるものもあります。
雄猫のスプレー行動などは、多くの場合改善します。雄犬のマーキングは、それほど変わらないかもしれません。
マウンティング(腰振り)行動や攻撃行動などに関しても減少する事が期待できます。
ただし、個体差があり確実とは断言できません。行動の問題に関しては、不妊・去勢手術で改善する部分もありますが、個別での治療が必要になる事もあります。

Q デメリットはあるのでしょうか?
最も一般的な問題としては、体重が増えやすくなることです。不妊・去勢後は、食事の管理をお願いします。
そのほかに、女の子の場合には、尿失禁の発生が認められる事があります。
大型犬での発生が多く、特に3ヶ月以内の弱齢で手術を受けた場合、その発生率は高まります。
その他、いくつかの腫瘍や甲状腺機能低下などの発生率を上昇させる可能性があると、報告がでてきています。今のところ断言できないのが現状です。

Q 不妊・去勢は、いつ行えばいいのですか?
ネコちゃんの場合は、生後6ヶ月以降でお勧めしています。4~5ヶ月でマーキング行動が始まる事があり、その時は早めに行います。
ワンちゃんの場合は、男の子では1才を目安に、女の子では生後6ヶ月頃でお勧めをしています。初回の発情が、始まってしまった場合には、1~2ヶ月後に行うようにしています。なお、大型犬に関しては、骨格成長を待った方が良いとの報告もでてきており、1歳弱での手術をお勧めします。

Q 手術は安全なのですか?
ニコ動物病院では、術前検査をおこない、安全性が高い麻酔薬を選択して行います。
手術用の糸も、生体への影響が少なく安全性の高い吸収糸を使用しています。
そのほか、当然ですが滅菌済みの器具を用いて行います。
全身麻酔での手術ですので、100%とは断言できませんが、
出来るだけ100%に近づける努力をおこなっております。