泌尿器疾患

お水を飲む量が多くなってきた、尿が出にくい、トイレの回数が多いなどの症状がある場合は、泌尿器のトラブルの可能性があります。症状の緩和や維持を目的とする慢性腎臓病や、命の危機に直結する尿路閉塞など、原因によって治療法が異なります。しっかりと検査を実施し、原因に対する適切な治療を開始することが大切です。

慢性腎臓病

 さまざまな原因により腎臓の機能が失われてしまっている病気です。脱水、高窒素血症、食欲不信、嘔吐、高血圧、貧血などの症状が認められます。腎臓の機能を維持することと、症状の緩和が治療の目標となります。ステージにより必要となる治療が異なります。現在のステージを判断するために、いくつかの検査を実施し総合的に判断します。

当院で行う検査

「脱水の評価を含む身体検査」一般状態を把握します。脱水の評価や口臭の悪化なども腎臓病と関連あるため注意深く観察します。

「SDMAを含む血液スクリーニング検査」血液のスクリーニング検査により、腎臓の状態を含む全身状態を把握します。SDMAは近年腎臓の診断に有用とされている指標です。腎臓病では、貧血が発生することもあります。

「レントゲン検査」腎臓のサイズや形態を評価します。結石の存在なども確認します。

「超音波検査」超音波検査により、腎臓の形態やサイズ、腎臓や尿管の状態を確認します。

「尿検査」尿比重、尿蛋白クレアチニン比などを測定します。腎臓病の進行や治療法を決定するために必要です。

「血圧測定」腎臓病が発生すると、血圧の上昇を認める事があります。高血圧は腎臓病の進行を早めてしまうだけでなく、眼や神経症状などさまざまな異常を発生してしまいます。

「血液ガス測定」体がアシドーシスの状態になっているか評価をします。

治療

 現在の症状を軽減する治療と、進行を防いでいくため治療を行います。たくさんお水を飲んでいるにみえても、脱水症状が進行していることはあります。そのため、できるだけ飲水量を増やす工夫を実施していただきます。高血圧やタンパク尿が発生している場合は、それぞれお薬を処方します。その他、血流を保ち腎臓の障害を防ぐお薬の投与など、お勧めする場合もあります。

急性腎障害

 何らかの原因によって腎臓の機能が停止してしまう病気です。脱水や虚血、感染、中毒などが主な原因になります。腎臓の機能が停止してしまうと尿の生成が止まってしまうこともあり、老廃物の排泄が滞ってしまいます。その期間をできるだけ短くするために治療することと、その期間に発生する体の変化にどう対応するかが大切になってきます。

当院で行う検査

「触診を伴う一般身体検査」脱水の進行や可視粘膜の色調などを評価します。体重減少がなく、一見すると体調悪化がない様に見える場合もあります。

「SDMAを含む血液スクリーニング検査」腎臓に関する数値の評価、カリウム数値の確認などが必要です。SDMAは近年腎臓の診断に有用とされている指標です。

「血液ガス検査」体が酸性に傾くことになります。必要に応じ補正が必要です。

「尿量測定を含む尿検査」通常の尿検査の他に、カテーテルなどを設置して1時間あたりの尿量を計量します。

「超音波検査」腎臓や膀胱の状態、特に腎盂や尿管の拡張など閉塞を疑う所見が認められないか確認します。

治療

閉塞などの問題を除外したのちは、点滴での治療が中心となります。尿が作られなくなる時期もあり、点滴が過剰にならない様に注意が必要です。状況により利尿剤を投与し、尿の生成を促します。尿が作られない間は、老廃物の排泄やミネラルバランスの調整ができないため、常に命の危機がありとても注意が必要です。排尿が始まると症状は改善していきますが、最終的に腎臓に障害が残ることもあります。

尿石症

 尿中に形成される結石のことです。尿には多くのミネラル成分が溶け込んでおり、その成分が析出化することにより発生します。結石ができる一般条件として、濃度、pH、促進物質の存在、阻害物質の欠如などがあげられます。腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と、結石が発見されが部位により症状が異なります。それぞれ個別の対応が必要になります。

尿管結石

腎臓から膀胱の間にある細い管が尿管です。その細い管に結石が停滞してしまう病気です。痛みを伴い、元気消失、食欲不振、腎機能障害が発生する場合もあります。なかには症状を示さず、偶然発見されることもあります。閉塞を起こすと患側の腎臓から尿の生成がされなくなり障害されます。多くの場合はシュウ酸カルシウム結石であり、溶解することはできません。手術にて摘出が必要です。

 当院で行う検査

「一般身体検査」尿の貯留状況や、腎臓のサイズなどに注意を払いながら、身体検査を実施します。

「血液スクリーニング検査」BUN、CRE、SDMAなど腎臓の評価を含めた血液検査を実施します。

「尿検査」細菌感染の状態や結晶の確認を行います。

「レントゲン検査」結石の存在と位置を確認します。

緑やじるしの白い陰影が尿管結石

「超音波検査」腎臓や尿管の確認をします。閉塞が認められる場合は、明らかな拡張を示します。

黒く見えている部分が、尿管閉塞により拡張した腎盂
左から右に見える黒い線が尿管。その終点で白くなっているのが尿管結石です。
反対側の腎臓には、腎盂の拡張は認められない

 治療

 腎臓の機能改善と温存をするためには、手術での摘出が必要である場合が多く、それを前提に治療を進めていきます。溶かすことができないシュウ酸カルシウム結石が形成される事が多く、経過観察はお勧めしません。腎臓の機能異常が軽度である場合は、数日経過を観察し排泄をまつ場合もあります。無症状で発見が遅れてしまった場合は、腎臓の機能と構造が完全に失われていることもあります。その場合、積極的な治療はなく経過観察になる場合もあります。

尿管は非常に細いため、顕微鏡を用いて手術を行います。
尿管から結石を摘出しているところ
わずか2mm程度の小さい結石

膀胱結石

膀胱の中に結石が形成されてしまう病気です。頻尿や血尿などの膀胱炎症状を認める事がありますが、症状を伴わない場合もあります。膀胱炎症状が繰り返し発生している場合は、結石が原因になっていることがあります。

当院で行う検査

「腹部触診を含む一般身体検査」一般的な身体検査に加え、腹部の臓器を触診します。膀胱内に「ジャラジャラ」と結石が触知できる場合があります。

「レントゲン検査」膀胱内にある結石を確認します。レントゲンでは確認しづらい結石もあり、その場合は造影剤を投与する場合もあります。

「尿検査」細菌感染の状態や結晶の確認を行います。

尿検査にて、顕微鏡で結晶が確認できます。

「超音波検査」膀胱内の状態を確認します。結石がある場合は、結石の後ろに黒い影を引く特徴的な写り方をします。あわせて腫瘤などが無いかも確認します。

治療

 膀胱結石の場合は、はじめに食事での溶解を試みます。1ヶ月経過しても変化ない場合は、手術にて摘出します。膀胱炎などの症状が重篤な場合は、先に手術を行い摘出します。摘出した結石は、成分分析検査を行います。結石の種類により今後の対応が変わってきますが、再発しないように食事管理など必要になります。

膀胱を切開し結石を摘出しているところ

尿道結石(閉塞)

膀胱内にある結石や剥離した粘膜などが、尿道に詰まってしまうことにより発生します。その他にも、腫瘍や炎症により発生する場合もあります。原因により対応は異なってきますが、まずは尿路を確保する事が大切となります。

当院で行う検査

「腹部触診を含む一般身体検査」閉塞が発生していると、尿が著しく貯留しており膀胱が硬くなっています。

「血液スクリーニング検査」BUN、CRE、SDMAなど腎臓に関する数値の評価、カリウム数値の確認などが必要です。

「レントゲン検査」尿道内に停滞している結石などの存在を確認します。

「超音波検査」膀胱内に貯留、停滞している内容物を確認します。砂状の結石がたくさんある場合は、再発の可能性を考えておく必要があるでしょう。

治療

 まずは尿路を確保し、排尿を促す必要があります。その後、静脈点滴を行います。腎数値やカリウムに異常値がある場合は特に重要です。治療中は、尿量の確認や結石などの再閉塞を予防するため、尿道カテーテル設置を行う場合もあります。膀胱炎や膀胱結石の治療をおこないます。症状が改善した後には再発を防ぐ予防に移ります。腫瘍による閉塞がある場合は、手術での対応を検討します。

膀胱炎

 膀胱が何らかの原因で炎症を起こしている状態です。いつもより排尿の回数が多い、尿が出ないのにトイレに行く、我慢できずいつもと違う場所でする、血尿が出るなどの症状が発生する事が多いです。細菌などの感染を原因とすることが多いですが、ストレスが原因の一つとなる事もあります。治りが悪い時や繰り返す時は、結石や腫瘍などの除外が必要です。

当院で行う検査

「尿検査」顕微鏡での細菌や炎症細胞の確認します。化学検査で、血液の反応や様々な情報を検出します。

「超音波検査」膀胱の状態を確認します。膀胱壁の厚みや、粘膜面の状態を評価します。

「細菌培養薬剤感受性検査」多数の細菌が認められる場合は、培養検査を実施し細菌の同定と薬剤感受性を評価します。

治療

細菌感染が認められる場合は、抗生物質での治療を行います。症状の改善が十分でない場合は、細菌が原因の場合は細菌培養感受性検査を行い、使用する薬剤の変更を行います。腫瘍や結石など、他の原因がないか再度評価も行います。