神経疾患

   対麻痺の症状がある時に鑑別に上がる疾患です。ダックスフンドに多く発生しますが、その他の犬や猫でも発生があります。椎間板とは、椎体と言われる背骨の間にあるクッションの様な役割を持っている組織です。線維輪と言われる周囲の強固な部分と、髄核物質と言われる柔軟な部分で構成されます。椎間板が飛び出して神経を圧迫することにより、強い痛みや麻痺の症状を発生します。椎間板障害が発生する部位により、症状は変わります。胸から腰あたりで発生した場合は、両後肢に麻痺が発生します。症状が重度になると立ち上がる事もできなくなります。

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価をします。

「神経学的検査」全身の神経的な異常を検出。病変の発生部位の推測に役立ちます。

「レントゲン検査」背骨の異常所見を検出します。神経の圧迫はこれでははっきりしません。

「CT検査」椎体の異常を詳しく検出します。石灰化している髄核物質の描出は可能です。

「MRI検査」神経の状体、圧迫の程度などを正確尿化します。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

内科治療と外科治療の両方の方針があり、重症度により治療の選択肢が変わります。

立ち上がることが困難な重度麻痺所見がある時は、外科的な対応が望ましいと考えられています。症状が軽度な場合は、手術ご希望がない場合については内科的な治療を実施します。内科治療では、再生医療で治療効果が期待できる場合もあります。手術適応でない場合も、選択肢があるので安心してください。

 馬尾症候群とは腰仙部領域における神経症状です。中枢神経が腰のあたりから末梢神経になります。特に腰仙椎部分、骨盤手前での発生が多いです。椎間板の突出や脊柱管の狭窄所見などで発生します。腰部の椎間板ヘルニアと異なり、末梢神経障害なので歩行不能な麻痺になる事はないですが、強い痛みが発生します。腰のあたりを触られるのを嫌ったり、後ろ足で立ち上がれなくなったり、高いところに登れなくなったりします。排便などの時に痛みが生じる事もあります。

当院で行う検査

「神経学的検査」神経の検査により、重篤な麻痺を伴っているか判断します。

「レントゲン検査」椎体の異常を検出します。孵化かが勝っている部分には、変形性脊椎症などが認められることがあります。

「CT検査」椎体の異常、脊柱管の狭窄所見などが得られる場合はあります。

「MRI検査」神経の圧迫や黄色靱帯の肥厚など、ほかの検査では検出できない異常を感知します。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

麻痺症状が重篤にならないため、内科治療から開始することがほとんどです。痛みを緩和する治療を一定期間継続することで、症状が消失することが多いです。中には、症状が重く治療後も痛みが強い場合や、痛みを抑える薬が終了できない場合があります。治療に反応ない時や、重症な場合は外科手術が必要になります。

前庭神経が障害されることにより発生する病気です。突然首を傾げたままになったり、眼振と言われる眼の不随意運動が見られたり、ぐるぐると床を転がったりするなどの症状が発生します。原因は多岐に渡り。耳の炎症や内分泌疾患、そのほか脳腫瘍や原因が特定できない特発性などが鑑別にあがります。眼振の方向やその他の症状から、中枢性か抹消性かの推測をします。中枢性が疑われる場合は、診断のためにMRI検査を実施する必要が出てきます。ぐるぐる回る様な症状も徐々に弱まってくる事が多いですが、嘔吐や食欲不振がある場合は、それらに対してのサポートも必要になります。

当院で行う検査

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価、炎症や甲状腺などの異常を評価します。

「神経学的検査」神経の検査により、抹消と中枢の推測をします。

「耳道内検査」外耳炎の存在を確認します。

「レントゲン検査」耳道や鼓室包の異常を検出します。

「CT検査」耳道や鼓室包の異常をより精密に検出します。脳変化に関しては観察が難しいです。「MRI検査」内耳、脳内の病変を詳しく描出する事が可能です。正確な診断には不可欠です。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

急性症状の時には、内科治療を優先して行います。ぐるぐる回ることにより発声する嘔吐などを緩和し、食事十分に摂れない場合はサポート給餌を実施します。麻酔をかける事が可能な状態であれば、MRIでの検査をお勧めします。原因が特定できた場合は、原因に対しての治療を開始します。特発性の場合は、時間の経過とともに症状は改善していきます。斜頸などは、残る事もあります。中枢性の場合は、原因によって予後は様々になります。

 水頭症は脳脊髄液が過剰に貯留することにより発生する病気です。先天的に発生する事も多く、チワワなどでよく見かけます。丸いドーム状の頭の形をしており、頭蓋骨の形成不全、外斜視なども伴っています。症状は様々で、学習の遅延や、軽度の意識障害、重症例では、痙攣や沈鬱、視覚障害や盲目なども発生します。

当院で行う検査

「血液スクリーニング検査」全身状態を把握します。痙攣発作などがある場合は、反応性発作の除外としても重要です。

「神経学的検査」神経の検査により、重篤な麻痺を伴っているか判断します。

「レントゲン検査」頭蓋骨の状態を把握します。脳質の拡大などは分かりません。

「CT検査」頭蓋骨の状体や頚部の椎体異常などを観察します。

「脳エコー検査」頭蓋骨形成不全がある場合は、エコー検査で脳内を観察することができます。脳質の拡大やVB値などを調べることができます。

「MRI検査」脳質の拡大所見を観察する事ができます。他の脳内病変も除外でき、確定診断につながります。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

急性期や症状が軽度の場合は内科治療から開始します。臨床症状を改善させるため脳圧を下げる治療を、点滴や内服にて投与します。症状が重度の場合は、手術をお勧めします。経過が長くなって、痙攣や視覚異常の症状が出ている場合は、手術でも改善しない事があります。

脳や髄膜に炎症を起こす病気です。感染源が無い状態で発生する非感染性と、細菌や真菌、ウイルスなどの感染によって発生する感染性があります。非感染性は、免疫応答の異常によって発生すると考えられており免疫抑制治療が必要になります。感染性は、病原体に対する治療が必要になります。初期は感染源を特定できない事も多く同時進行で進めていきます。

当院で行う検査

「血液スクリーニング検査」全身状態を把握します。炎症反応の検出。痙攣発作などがある場合は、反応性発作の除外としても重要です。

「神経学的検査」神経の検査により、重篤な麻痺を伴っているか判断します。

「脳脊髄液」脳脊髄液検査により、炎症の存在を確認します。同時に感染源を特定する検査を実施します。

「MRI検査」脳の構造異常や腫瘍などの除外、炎症の状態を検出することができます。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

痙攣などの臨床症状の緩和と同時に、原因に対しての治療を行います。感染の存在が確認された場合には、感染源に対しての治療を選択します。非感染性の炎症の場合には、免疫抑制を中心に治療を計画います。脳の損傷により治療後の回復程度は様々です。感染性のこともあるため早期に原因を診断して、治療を開始する事が大切です。

脳神経の過剰な興奮によって発生する痙攣症状です。痙攣が発生している場合には、脳のトラブル以外に痙攣を起こす原因を除外する必要があります。血液検査にて反応性発作を、身体検査や心臓エコー検査によって心不全を除外します。それらに異常がない場合は、てんかんとして対応します。てんかんには脳炎や腫瘍などから発生する症候性てんかんと、脳の構造には異常がない特発性てんかんがあります。この二つの鑑別には、MRI撮影が必要になります。

「血液スクリーニング検査」低血糖、肝疾患、腎疾患、電解質異常、甲状腺機能異常など反応性発作の原因を除外する必要があります。そのほか心臓病マーカーの除外も行います。また、重積発作と言われる、痙攣症状が長い時間持続している症状が出ている時は緊急対応が必要になります。

当院で行う検査

「血液スクリーニング検査」全身状態の把握と炎症反応の検出により、反応性発作を除外します。

「心電図」不整脈の検出をします。

「心エコー検査」肺高血圧症など、痙攣を発生しやすい症状がないか判断します。

「神経学的検査」痙攣が発生していない状態での神経的な異常の有無を確認します。

「MRI検査」脳の構造異常があるか精密に描出します。MRIは外部機関と連携して行います。

治療

肝不全や腎臓病などの反応性発作が見つかった場合は、原因の治療も併用して治療を開始します。

MRIで脳腫瘍や脳炎などの症状が発見された場合は、手術や放射線療法、抗炎症療法などの治療も提案いたします。てんかんの症状を抑えるためには、抗てんかん薬の投与が必要です。何種類もあるので、その中から適合するものを選択します。てんかん症状がコントロールできている場合にも、お薬の投与量は適正化判断するため血液検査は定期的に必要です。