腫瘍

肥満細胞と言われる白血球の仲間である細胞が、腫瘍化することによって発生します。様々な部位で発生します。猫の顔周囲の皮膚に発生した腫瘤、犬の柔軟な皮膚腫瘤として発見される事が多いかもしれません。赤みや痒みを伴うことも特徴の一つです。その他、肝臓や脾臓、消化管などにも発生する可能性があります。

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価、好塩基球の上昇がないかも評価をします。

「レントゲン検査」皮膚に発生している場合は、転移病変の確認を行います。

「超音波検査」腹腔内腫瘤、液体貯留の確認

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。十分な細胞が回収できた場合は、検査機関に提出し診断を得ます。細胞で確定診断が下ることもあります。

「c-kit変異の確認」細胞材料を用いて遺伝子検査を行います。化学療法の有効性を確認するため検査を実施します。

「病理組織検査」部分的な生検や手術での摘出後に実施。肥満細胞種の確定診断とグレード(悪性度)を明らかにする事ができ治療の選択肢と予後評価につながります。

治療

発生部位や状況により異なりますので、皮膚に発生した場合を例に説明します。

細胞診で肥満細胞種と確定診断が出た後は、遠隔転移の発生があるのかどうかを確認します。肥満細胞種は、肝臓や脾臓に転移しやすいので注意が必要です。転移がない事が確認できたなら、手術により摘出をします。犬の場合は、広範囲の切除が必要になります。手術範囲などを事前に決定するために可能であれば部分的な生検を実施します。それにより何の程度で切除が必要か事前に判断する事ができます。猫の場合は、最低限の範囲での切除が可能です。

手術後は病理検査にて、細胞レベルでの取り残しがない事を確認します。

グレードによりますが、再発を防ぐため化学療法を併用する事があります。

リンパ球と言われる白血球の中まである細胞が、腫瘍化することにより発生します。様々な部位で発生する腫瘍です。犬で最もよく見かけるのは、全身のリンパ節が大きく腫れるタイプです。体調が悪化し元気がなくなってから発見される場合もあれば、比較的元気なのにリンパ節だけが腫れている場合もあります。その他、下痢や嘔吐などの消化器症状が改善しない時に、最終的に内視鏡などでリンパ腫と診断が下されることもあります。猫の場合では、消化管に発生して消化器症状を示すタイプがよく見られます。猫の消化器型では、腸管やリンパ節に腫脹が認められる事も多く、超音波ガイドでの針生検にて細胞を回収し、診断が下せることも多くあります。その他、鼻炎の症状が治らないと、来院されて組織検査にてリンパ腫と診断されることもあります。

当院で実施する検査

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価、貧血やリンパ球球の上昇がないかも評価をします。

「レントゲン検査」鼻腔内の病変や、全身への転移確認を行います。

「超音波検査」腹腔内や胸腔内の病変を描出します。

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。腹腔や胸腔内の腫瘤は超音波検査ガイド下で実施します。十分な細胞が回収できた場合は、検査機関に提出し診断を得ます。細胞で確定診断が下ることもあります。

「クローナリティ検査」細胞材料を用いて遺伝子検査を行います。腫瘍化している遺伝子の増幅があるかどうか。またそのリンパ球が、胸腺由来なのか骨髄由来なのかを判別します。今後の化学療法の有効性を確認するために有効な検査です。

「病理組織検査」細胞診にて確定診断が得れ荒れない場合や、消化管に大きな腫瘤形成をし、摘出手術を実施した場合などに行います。細胞診と比べると、より確実な診断が得られる事が多いです。大細胞性、小細胞性など臨床的なグレードを評価することも可能になります。

治療

リンパ腫の治療は化学療法が主軸となります。緩やかに進行する低グレードと言われるものには、内服の薬剤を用います。反対に、高グレードと言われるものに対しては、週1回の注射薬での治療が必要になります。そのほかに、腫瘤がある程度限局している場合には、局所療法を用いる場合があります。局所療法は、外科手術や放射線療法のことで、消化管に発生している場合は

外科的に摘出し、鼻腔内に発生した場合は放射線療法を選択する場合があります。

腺上皮から発生する悪性腫瘍です。鼻腔内、消化管、肺、気管支、皮膚など様々な部位で発生します。鼻炎が治らないなと詳しく検査をすると、鼻腺癌が発見されたり。食欲不振や嘔吐などの症状が改善しない時に詳しく検査をすると、胃や腸の洗顔が発見されたりします。鼻腔内腺癌のに関しては、浸潤性に増殖する事が多く、周囲の鼻腔内は骨組織への広がりの評価が必要になります。摘出する事は困難である事が多く、診断後は放射線療法や化学療法を実施します。

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価、内科的な疾患の見落としがないかも評価をします。

「レントゲン検査」鼻腔内の場合は、広がりや骨浸潤を評価します。腹部や胸部のレントゲンでは、原発病変の検出や転移病変の確認を行います。

「超音波検査」腹腔内腫瘤、液体貯留の確認

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。十分な細胞が回収できた場合は、検査機関に提出し診断を得ます。細胞で確定診断までは出せませんが、否定できる疾患を明らかにすることができます。

「CT検査」鼻腔内の腫瘤に対してとても有効です。鼻腔内腫瘤の広がり方、骨への浸潤などを評価することができます。組織検査を実施する場合の、手掛かりとしてもとても大切です。そのほか、腹腔内に発生した腫瘤の形態や、肺野への転移を確認するのに役立ちます。

「病理組織検査」部分的な生検や手術での摘出後に実施。肥満細胞種の確定診断とグレード(悪性度)を明らかにする事ができ治療の選択肢と予後評価につながります。

乳腺に発生する腫瘍です。メスに発生が多い腫瘍ですが、まれにオスでも発生があります。初めは乳腺組織に小さいしこりがで、徐々に拡大してきます。乳腺内に多発することも多いです。診察時には、リンパ節も腫れていないか確認する必要があります。若いうちに不妊手術を実施することで、乳腺腫瘍の発生を防ぐことができるとされています。摘出後に悪性の乳腺がんと診断された場合は、再発や転移のリスクが高いと考えられます。そのため、術後に化学療法を実施する事があります。

当院で行う治療

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価をします。

「レントゲン検査」肺野への転移確認を行います。

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。乳腺腫瘍以外の皮膚腫瘍と鑑別する事ができます。細胞診だけでは、悪性か良性かの判断はできません。

「病理組織検査」手術によって摘出した組織を提出します。腫瘍の種類や周囲への浸潤性を評価し、最終的な診断を下してもらいます。良性腫瘍か悪性の乳腺がんかの判断もこの段階で確定します。

治療

乳腺腫瘍の治療は、手術を選択します。手術する範囲は、乳腺腫瘍の広がり方により決定します。

1つの乳腺だけを摘出する場合から、すべての乳腺を一緒に切除する場合まで幅はあります。

不妊手術を実施していない場合は、同時に実施することもあるため事前に相談します。手術での摘出後は、検査結果にって追加治療をするか判断します。悪性腫瘍と判断された場合には、数回の化学療法を実施します。

非上皮性の悪性腫瘍です。全身の様々な部位に発生する可能性があります。脾臓に発生した腫瘤として遭遇する事がよくあります。血管肉腫は、気が付かない内に大きくなってきます。腹腔内で破裂し出血を起こし、虚脱(グッタリ)して病院へ来院されることもしばしばあります。状態を改善させた後は、再破裂を防ぐため手術にて摘出をお勧めします。手術後は、病理検査を実施し確定診断が下ります。予後に関しては、非常に厳しく転移確率も非常に高い腫瘍です。

当院で行う検査

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価、貧血の評価をします。

「レントゲン検査」腹腔内の腫瘤、液体貯留の確認

「超音波検査」腹腔内腫瘤、液体貯留の確認

「腹水の検査」液体貯留が認められた場合は、少量回収して貯留液の状態を確認します

「腫瘍マーカー」悪性腫瘍の可能性が高いか、確認するための検査です・

「病理組織検査」部分的な生検や手術での摘出後に実施。確定診断を得ることができます。

治療

 「内科治療」腹腔内出血による、ショックからの改善を目指します。点滴、止血、輸血など検討します。

 「外科治療」腫瘤摘出が現在の状態を改善させる場合は手術を実施します。手術前には、十分に計画を立てて相談します。

 「化学療法」進行を抑える、再発を防ぐなどの目的で実施します。副作用の発生を極力抑え、生活の質を低下させない様に注意します。

  

  脂肪組織が腫瘍化したものです。良性腫瘍に分類されます。2~3cmで発見された小さいものから、20cm以上の大きなものまで様々あります。良性腫瘍なので、転移などの発生はありませんが、徐々に拡大を続けて最終的にかなりの大きさまで成長する事があります。

当院で行う治療

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。少量の脂肪細胞や、脂のみで細胞が回収できないこともあります。。

「病理組織検査」手術によって摘出した組織を提出します。まれに脂肪肉腫という悪性のもに遭遇することもあり、脂肪腫の確定を得るためには必要です。

治療

良性の腫瘍なので、小さいうちは経過観察をする事が多いかもしれません。徐々に拡大してきた場合は、外科的に摘出する必要があります。脂肪腫と診断がついた場合は治療終了です。多発すること多く、今後も同様のものが出来る可能性はあります。

皮膚に発生する良性腫瘍です。ピンク色の腫瘤を形成します。この腫瘍は2-3ヶ月で自然に消失してしまいます。サイズが大きい場合や、時間が経過した後も縮小しない場合には、摘出をお勧めします。見た目が類似する腫瘍としては、形質細胞腫があります。

当院で行う治療

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。円形の細胞が多数回収されます。組織球腫は円形細胞腫瘍に分類されるので、細胞診で確定診断が下される事があります。

「病理組織検査」手術によって摘出した組織を提出します。組織球腫と診断された場合は、良性と判断できるため治療終了です。

メラニン細胞をたくさん有するメラノサイトが腫瘍化したものです。メラノサイトは体の至る所にあるため発生部位は様々です。黒いというイメージがありますが、悪性化するとメラニン顆粒をあまり持たない細胞が多くなり、黒くない腫瘤に遭遇することも多いです。発生部位により腫瘤の挙動が異なります。犬の皮膚に発生した黒い腫瘤は、予後は良い傾向が多いですが、口腔内に発生したものは、遠隔転移の発生もあり注意が必要です。

当院で行う治療

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価をします。

「レントゲン検査」肺野などへの転移確認を行います。

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。細胞内にメラニン顆粒が含まれる細胞が確認できると、疑いが強くなります。

「病理組織検査」手術によって摘出した組織を提出します。悪性黒色腫と診断された場合は、今後の挙動に注意し今後の計画を立てます。

治療

診断を下した後は、手術計画を立てます。完全に摘出ができるかどうかも大切です。ただし、遠隔転移の可能性も高い腫瘍ですので、手術以外の点にも注意が必要です。定期的に再発や、転移の確認をする必要があります。

組織の表面を構成する扁平上皮が腫瘍化したものです。この扁平上皮も体の至る所にあるため発生部位は様々です。発生部位により傾向はある程度変わりますが、遠隔転移よりも局所浸潤性が強い傾向があります。口腔内に発生した場合は、発生部位により予後は変わります。顎の先に形成されているならい、完全に切除できる可能性が高くなります。

当院で行う治療

「血液スクリーニング検査」全身状態の評価をします。

「レントゲン検査」肺野などへの転移を、頭部なら骨への浸潤度を確認します。

「CT検査」肺野などへの転移を、頭部なら骨への浸潤度をレントゲンより詳しく確認します。

「細胞診」細い注射用の針を用いて細胞を回収します。

「病理組織検査」手術によって摘出した組織を提出します。診断された場合は、根治可能なら積極的な計画を立てる事が可能です。

治療

診断を下した後は、手術計画を立てます。完全に摘出ができるかどうかも大切です。ただし、遠隔転移の可能性も高い腫瘍ですので、手術以外の点にも注意が必要です。定期的に再発や、転移の確認をする必要があります。